今回のテーマは「分析で終わらせないエンゲージメント向上」

小田木朝子氏(以下、小田木):本日もご参加ありがとうございます。株式会社NOKIOOが主催の90分腹落ちセミナー開始させていただきます。沢渡さん、今日もよろしくお願いいたします。

沢渡あまね氏(以下、沢渡):今日もよろしくお願いします。

小田木:みなさま、株式会社NOKIOOが主催する90分腹落ちオンラインセミナーにご参加いただきまして、誠にありがとうございます。

人材育成・組織開発に関わる方向けに、90分で役に立つ情報を提供する場を作りたい。これが、90分腹落ちセミナーのコンセプトです。その中で、本日は「分析で終わらせないエンゲージメント向上」をテーマに進行させていただきます。

それでは、本日のスピーカーの自己紹介をさせていただきたいと思います。まず、沢渡さんからお願いできますでしょうか。

沢渡:みなさんこんにちは、毎度お騒がせしております、「沢が渡る」と書いて沢渡あまねでございます。噺家の出だしみたいになってきたな(笑)。

小田木:(笑)。もう、口上ですよね。

沢渡:業務プロセス・コミュニケーション・組織開発の物書きをしています。あまねキャリア株式会社代表取締役で、NOKIOOには顧問で参画しています。

転職経験もあります。日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社など、16年間はいわゆるサラリーマンをしました。現在はパラレルキャリアで、複数の組織にエンゲージしています。そして私は多拠点生活をしておりまして、浜松・東京と複数の地域にもエンゲージしながら活動をしています。

私の経験職種のバックグラウンドは大きく2つ、「IT×広報」と「グローバルIT×グローバル広報」です。複数の職種にエンゲージしながら、働く景色、組織の景色を解決していく仕事を生業としております。よろしくお願いします。

小田木:沢渡さん、今日もよろしくお願いいたします。

沢渡:よろしくお願いします。

多様な価値観を持つ人が「力を発揮できている状態」を目指して

小田木:それでは、私も自己紹介をさせてください。株式会社NOKIOOという会社で役員をしております、小田木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。硬く言うと、仕事は人材育成・組織開発なんですが、特に力を入れているのがダイバーシティ推進です。

女性や外部のパートナーだったり、いろんな価値観や多様なバックグラウンドを持つ人が組織の中にいる状態は増えていると思います。いろんな人が「いる」だけじゃなくて、みんなが個性を活かして十分に力が発揮できている状態を目指し、どうしたらもっと一人ひとりの仕事が楽しくなり、会社としてもパフォーマンスが上がるかを考えたり、「実現したい」という人たちと一緒になって試行錯誤していく。これが、今の仕事の醍醐味かなと思ってます。

今日の(イベントテーマの)「エンゲージメント向上」に興味津々で、進行させていただきます。

沢渡:もうこの時点で、90分じゃ足りない気がしてきましたけれども(笑)。

小田木:(笑)。そうですよね。でも、なるべく90分に収まるように進行していきたいと思いますので、みなさまどうぞよろしくお願いいたします。

沢渡:よろしくお願いします。

小田木:そして、こんなページを作らせていただきました。「参考新刊情報」(笑)。まず、左の2冊。沢渡さんが最近どんなテーマに関心があって、どんな発信をされているのか、この本も参考にしながら共有いただいてもいいですか?

沢渡:ありがとうございます。一番左側の『どこでも成果を出す技術』。ハイブリッドワークと言われていますが、テレワークでもオフィスワークでも、それこそ私の大好きなダム際でも、成果を出す環境をどう作っていくか。

今日のエンゲージメントのテーマも、働く環境が違うそれぞれの人たちが、自分たちの「勝ちパターン」で成果を出して、チームワーキングをしていく。密接に関係してくるテーマかなと思いますので、今日はハイブリッドワークの考え方も少し注入しながらお話しできればなと思います。

そして真ん中は、『新時代を生き抜く越境思考』。垣根を越えてつながって、勝ちパターンを生み出していく。今日はそのための新しいエンゲージメントの考え方を、解像度を上げて説明できたらなと思います。そして、右が一番気になるんですけれども。

小田木:ありがとうございます。ちゃっかり自分のぶんも(笑)。私の2冊目になる書籍が、この『仕事は自分ひとりでやらない』という本です。

沢渡:いいキーワードだなぁ。

小田木:ありがとうございます。なんと、ちょうど今日(2022年4月21日)Amazonでも発売開始になったので、表紙も含めてみなさまにお披露目できるということで、ちゃっかり沢渡さんの本に並べて共有させていただきました。

自分の「がんばり」を共有できないと、人は仕事を辞めたくなる

小田木:今日の「エンゲージメント向上」につなげて考えると、私自身が過去に仕事を辞めたくなったのはどういう時だったかと思うと……。

沢渡:小田木さんにもそんな時があったんですね。

小田木:あります。(仕事を辞めたくなったのは)仕事が大変な時じゃないんですよ。「大変な状況を自分一人でがんばってる」と思った時に、仕事を辞めたくなったんですよね。

沢渡:わかるわぁ。最近はDXの文脈の中でも、「DX推進を会社から任せられて、社長から『やれ』と言われてやったけど、役員がふんぞり返って結局提案を聞いてくれない」という話を聞くことがありまして。誰もわかってくれない、寄り添ってくれないから、変革推進者の心が折れる景色を全国各地で見聞きしており、(今の話と)近いなと思いました。

小田木:たぶん、みんながんばりたいんだと思うんですよね。仕事をちゃんとやりたいし、成果も出したいし、がんばってるんです。そんながんばりを、「自分一人だけでがんばってる気がする」「がんばりや苦労、大変さが周りと共有できていない気がする」と思った時に、人は仕事を辞めたくなるんだなと私自身も体験しました。

沢渡:わかります。

小田木:なので、『仕事は自分ひとりでやらない』。一人で抱え込んで、一人だけでがんばろうとしないことに、実はエンゲージメントもつながってくるんじゃないかな。むしろ、連携して成果をあげる仕事のやり方にシフトすることで、いろいろと景色が変わる個人も組織もあるんじゃないかなと思います。

沢渡:いいと思います。仕事も悩みも自分一人で抱えないためには、越境してつながって行動していくスキル・メンタリティマネジメントにしていって、どこでも成果を出せるようになりましょうと。

小田木:横に一本つながりましたね(笑)。

沢渡:そんな世界観が見えました。ありがとうございます。

「勝ちパターン」も「常識」も、変わりつつある現代社会

小田木:そしてこの90分腹落ちセミナーは、参加者のみなさまが持ち寄る課題感や、関心ごとを取り上げながら進行していくスタイルを大事にしております。今日もできる限り双方向で、ライブで進められたらなと思ってます。

沢渡:最初にいいですか? みなさんのコメントや反応が、小田木さんと私のこの場のエンゲージメントを高めるのですよ。

小田木:それがあるとがんばれます(笑)。

沢渡:なので、どんどんコメントや反応をくださいませ。よろしくお願いします。

小田木:ありがとうございます。ということで最初に、チャットを使った簡単なオリエンテーションにご協力いただければと思います。今日は貴重な時間を割いてご参加くださっているわけなんですが、どんな関心ごとやテーマに対して(興味があったり)、もしくはどういった参加理由がおありですか?

作文すると大変ですので、一言のキーワードレベルでも構いません。今日の参加理由やテーマに対する関心ごと、よかったらコメントいただけますでしょうか。

沢渡:「人材育成の計画」とか、単語でも構わないです。

小田木:まさに「エンゲージメントの推進担当してます」とか、もしくは「こういう問題意識あるよ」とか。

沢渡:「若手のエンゲージメントを上げたい」とか、「むしろ中間層のモチベーション低下をなんとかしたい」とかね。

小田木:「マネージャーを元気にしたい」とか、いろいろありそうですよね。

沢渡:あるいは「会社からこういう期待を背負っている」とか……。早いっ、ありがとうございます。「一体感のある組織の作り方」「一体感のある組織とは?」。めちゃめちゃ心動かされる投げ込みですね。ありがとうございます。一体感の勝ちパターンも常識も変わりつつあるので、そういう話も今日できたらうれしいです。

多様性が増す=一体感が作りにくくなる

小田木:沢渡さんと中原淳先生との機会を持たせていただいた時に……。

沢渡:立教大学の中原淳先生。

小田木:「多様性が増すということは、一体感が作りにくくなるということとセットだよ」というお話をされてたじゃないですか。多様性が増すということは遠心力が働くことなので、そんな中で一体感作るってすごく難しいことなんだけれども、「それでも本当にみんな多様性を作りたいの?」という問いかけをされていたのを思い出しました。

沢渡:あのお話は深かったですね。(視聴者コメントで)「エンゲージメントがトピックになっている」。そうですね、経済紙や人材開発、組織開発の領域でもだいぶエンゲージメントの注目度は上がってきています。全社でエンゲージメントを掲げている会社も増えてきている実感です。

小田木:コメントの中で、「エンゲージメント調査の結果をもっと活用したい」とか、「(エンゲージメントを)高める・向上させることについて考えたい」というコメントもいくつもありますね。

沢渡:あとは「退職者が多い」「若手・中堅のモチベーション低下」というコメントも、やはり目立ちますね。

小田木:「経営理念の1つになったから」。

沢渡:「自ら手を挙げて人づくり支援に参画した」、すばらしい。うれしいなぁ。

小田木:「社員の幸せにつなげたい」。

沢渡:最近、ウェルビーイングも言われていますからね。ウェルビーイングとはまさに幸福、幸せ。社員のみならず、その仕事に関わる人たちの幸せをどう実現するか。うれしいですね。

小田木:みなさん、本当にオープンに書き込みをありがとうございます。こんなかたちで、今日はチャットをオープンに活用していきたいなと思っております。同じテーマについて関心のある、いろんな立場の人たちと双方向でディスカッションしながら、情報交換しながら参加できている実感も持てると思います。ぜひチャットはオープンなまま、ご参加いただければと思います。

沢渡:よろしければ、ぜひ「うちの会社ではこうやってるよ」なども書き込んでいただけると(うれしいです)。みんなでエンゲージしながら、場を作っていけたら最高なのかなと思ってます。

小田木:そうですね、ありがとうございます。でも、書き込みのハードルは高く考えずに、仲間とのLINEグループぐらいな感じでカジュアルに使っていただければと思います。

エンゲージメントを低下させる残念な事例

小田木:あらためて、今日の本題に入ってまいります。「分析で終わらせないエンゲージメント向上」が今日のテーマです。「一体感ある組織作り」というサブタイトルもつけさせていただきました。

最初に今日のキーワードの「エンゲージメント」をどのように解釈していくか。どう捉えることが今日の前提になっているのかという、景色合わせをしたいなと思います。沢渡さん、この観点を解説いただいてもよろしいでしょうか。

沢渡:承知しました。エンゲージメントとは何かを、みなさんと一緒に解像度を上げていきたいんですが、その前に。エンゲージメントを上げるための打ち手のアンチパターン、悪い例、残念なパターンの話をしたいと思います。

小田木:「こういう働きかけはちょっと残念かもしれない」という事例集でしょうか?

沢渡:そうですね。よろしければみなさんも、「こういうことを悪気なくやってしまって逆効果だったな」というのがあれば書いていただきたいです。

例えば左上の「エンゲージメントを高める? モチベーション下がってる? なら、飲み会や懇親会をやっときゃいいよ」。

小田木:(笑)。「もうちょっとみんなで話す場が必要だよね」みたいな。

沢渡:本当にそうなのか? というか、そもそもエンゲージメントが下がってる人は飲み会に来たがらないと思うんですよ。あるいは、時短勤務やテレワークをしていて飲み会に参加できないとか、時間外に学校に通っていらっしゃるとか。

そういう人たちはかえってハードルが上がって、なおかつ飲み会に来た人だけで物事が決まってしまったら、それこそ疎外感を感じて主体性を奪われると思うんですよね。

小田木:同じ生活時間で、まったく同じ価値観で、「楽しい」と思う物差しも同じ人であれば、エンゲージメント向上の打ち手としては最適かもしれないけれども、そうじゃない前提の中ではなかなか(難しいです)ね。

「愛社精神」を押し付けると、「退社精神」が育ってしまう

沢渡:そうですね。だから、過去は勝ちパターンだったかもしれないけれども、それって今は勝ちパターンなんだっけ?(と見つめ直す)。ここが、私が小田木さんと一緒に申し上げている、エンゲージメントの考え方をアップデートしなければいけない本質だと思うんですね。

小田木:早くも飲み会の事例だけでも、「あります」「あります」「あるあるです」というコメントが(笑)。

沢渡:飲み会だけで、すげぇ出てくるな(笑)。私も別に飲み会は嫌いじゃないんですが、それが前提というのは、これからの時代にはいかがなものかな?という話ですね。

あと2つぐらい、アンチパターンを指摘しましょうか。「人事部だけががんばればよい」。でも実際に、その仕事に対するやりがいや帰属意識って、半径5メートル以内のチーム単位で決まったりしますよね。現場のマネージャーや担当者、ミドルリーダーの振る舞いや行動が大事だったりします。

もう1つは、「みなが公平でなければならない」。例えば、「製造現場が出社しているんだから、本社の人たちもみんな出社しなければいけないよね」というのは、本当にそうなのか。会社単位で一律でエンゲージメントを考えるのではなくて、職種が違えば勝ちパターンや専門性の高め方も違う訳で、職種ごとにもう少しブレイクダウンして考える必要もあるんじゃないか、という議論もありますね。

あと、もう1つだけ。「『愛社精神』を育ませよう」。「エンゲージメント=愛社精神だ!」って叫んで押しつけると、かえって「退社精神」がすくすく育つというリアルがあるわけですね(笑)。

小田木:(笑)。笑えないけれども、今の表現にクスッときました。愛社精神を押しつけると、退社精神が増す。なるほどね。

エンゲージメントの対象は「会社」とは限らない

沢渡:そこで最初に、そもそもエンゲージメントって何か? という景色をみなさんと合わせたいと思います。私の定義なんですが、原語の英語に忠実に考えてみると、「エンゲージ」は複数の物事の関係性やつながりの強さを言います。

転じて、組織とそこで働く個人のつながりの強さ。それは組織や仕事に対する帰属意識、熱量、愛着、ロイヤリティだったりします。

組織や仕事と申し上げたんですが、ワークエンゲージメントを考えた時に、一昔前は「愛社精神だ!」(という考え方)だったと思うんですが、エンゲージメントの対象は「社」とは限らないわけですね。その時に向き合っている仕事のテーマやプロジェクトとか、もっと言ってしまえばチームのメンバーも対象になってきます。

これからの時代、プロジェクト型の仕事やジョブ型だとか、仕事の仕方も変化します。社会構造も働く環境も、人の多様性も技術も進んでいきますから、エンゲージメントの常識をそろそろアップデートしていきませんか? 今日はこんなテーマです。

小田木:なるほど、ありがとうございます。いろんな組織のつながりや、エンゲージメントをサポートされている沢渡さんにあえて聞きたいんですが、経営キーワードとして「エンゲージメント」が上がってくることに、会社は何を期待しているんですかね?

沢渡:さまざまキーワードがあります。例えばみなさんが挙げていらっしゃったような、「離職率を下げる」「人材定着」「採用強化」というテーマもあります。あとは生産性(向上)だとか、パフォーマンスが発揮できるようになるとか。

例えば、テレワーク自体は非常にいいものだと思うんですが、いきなりテレワークをして信頼関係が崩れてしまって、それによって生産性が落ちたり、残業が増えたり、パフォーマンスが低下した。このような話もよく聞きます。これは、仕事の「質」の部分ですね。

そこにフォーカスしている組織もあれば、どなたかが(コメントで)挙げていらっしゃった、ダイバーシティ&インクルージョン。所属会社や働き方が違う人、さまざまな能力や着眼点や意欲を持った人が、同じゴールに向けてチームビルディングしていくためには、どう物事に向き合ったりエンゲージメントを高めていくか。そこが関心の中心である組織もあります。

悪気なく、IT人材のエンゲージメントを下げてしまう状況

小田木:良い人が定着して、かつその良い人が定着することがキーになって、さらに良い人材が入ってくるという、「人のサイクル」の部分。パフォーマンスの観点も言っていただいたと思うんですが、エンゲージメントがなくても「心を殺してやるか」といって処理していく仕事がメインであれば、もしかしたらそんなに重視されないかもしれないです。

沢渡さんがいつもおっしゃるように、今までのやり方・勝ちパターンを手放しながら、新しい価値を生み出していかなきゃいけないというテーマは、エンゲージメントがない状態での実現はなかなか難しい。

もっと言うと、新しい価値を生み出すことには(エンゲージメントが)必須材料だという見方ができそうだなと、今のお話を聞いて思いました。

沢渡:そうですね。加えてここで強調したいのが、ダイバーシティ&インクルージョンです。企業が競争力や成長力を高めていくためには、今までとは違う人材や能力を取り込んで、新しいビジネスチャンスを作っていかなければいけないわけですね。

わかりやすい話をすると、ビジネスにおけるITへの依存度は高まってきていますよね。ところが、今まで自社にIT人材がいなかったものですから、IT人材を取り入れても処遇がわからなくて、悪気なくエンゲージメントが下がるような状況を作っていってしまって、辞めていく、あるいはIT人材が、もの言わぬ“おとなしい人”になってしまうことってあると思うんですね。

小田木:なるほど。

沢渡:だから、今までとは違う能力の人のエンゲージメントを高めていくことって、多様な人材が活躍するダイバーシティ&インクルージョンと表裏一体なんですね。

小田木:今、チャットで「愛社精神と言われると『?』となりますが、こういう定義なら納得します」「イエスマンを育てるのではなく、対等な関係を作り出すこと、そこに共感する人を増やしていくことですよね」といただきました。

沢渡:良い投げ込みをありがとうございます。最近言われている、パーパス経営やビジョン経営にすごく近い話だと思うんです。同じパーパスやビジョンに共感する人と、対等な関係で相互に力を発揮して、同じゴール・同じビジョンに向けて、どうチームにドライブをかけていくか。そういった意味で、私もエンゲージメントを捉えています。